起業時に融資や助成金を受けるなら必須!事業計画の立て方と注意点
初めて起業を目指す方向けに資金調達に必要な事業計画の立て方や進め方、注意点を解説します
起業には多くの不安がつきものです。中小機構が2019年に実施した調査によれば、起業を目指す方に多い不安として「収入の減少」「事業の成否」「何をすればよいかわからない」といった項目が上位となっています(※)。
こうした不安の解消につながるものが「事業計画」です。事業計画は、一定期間の事業全体をシミュレーションすることを指します。融資や助成金などの資金を調達する時にも事業計画が求められますので、起業においても必須と言えます。
ただ初めて起業する場合、「事業計画の立て方がよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。ここでは、ポイントを絞って事業計画の立て方の注意点などをまとめました。
※中小企業基盤整備機構「起業の裾野拡⼤に向けた調査研究」 2019年7⽉
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この記事の目次
事業計画(創業計画)とビジネスモデルとの違いとは?
事業計画(創業計画)とは
事業計画とは、今後の事業を進める計画のことです。
まず目標となる売上や収益を設定し、目標達成に向けて具体的な戦略を立てていきます。これから起業する場合、まず起業後3~5年間の事業計画を立てるケースが一般的です。どう事業を成長させるかのロードマップとも言えます。
事業計画は売上や経費など必要なお金の計画と合わせ、必要な設備や人材などさまざまな要素を盛り込む必要があります。また「市場が将来どのくらい拡大するか」など、周囲の環境やトレンドを予想した計画が求められます。
事業計画とビジネスモデルの違い
事業計画とよく似たものとして知られるのが「ビジネスモデル」です。ビジネスモデルとは、事業が収益を生み出す仕組みのことで、「どんな顧客に、どんなものを提供して、どうやって収益を上げるか」をまとめたものです。
例えば店舗を構えた小売業の場合、商品を仕入れて、お店に来るお客様に販売して収益を上げるのがビジネスモデルです。小売業の他にも、広告で収益を上げるタイプや取引の仲介手数料で収益を上げるタイプなど、さまざまなビジネスモデルがあります。
ビジネスモデルはいわば事業の設計書。そのためビジネスモデルだけでは、事業が今後どのくらい収益を上げられるかまでは追えません。一方、事業計画では数年後の具体的な売上や収益も含まれます。将来を見据えた計画という点が、ビジネスモデルと事業計画の大きな違いです。
起業に事業計画が必須な4つの理由
多くの起業家が、起業する際に事業計画を立てています。これは資金調達など起業のさまざまなシーンで事業計画が必要となるためです。ここでは、起業に事業計画が欠かせない4つの理由について解説します。
1.融資や助成金などの資金調達を受けるため
起業にあたって、金融機関から融資を受けたいという方も多いのではないでしょうか。融資を受ける場合、金融機関から事業計画の提出を求められます。当然ながら金融機関では融資先の返済能力をチェックします。そこで事業計画をもとに「事業の実現性があるか?」「将来性があるか?」などを判断します。
また起業時に活用したいのが、返済不要の助成金制度です。最近は地元での起業を増やすため、助成金を設ける自治体が増えています。こうした助成金を受ける際にも、実は事業計画が必要です。助成金を出す側は、事業計画を見て「この事業に助成金を出す価値があるか?」「助成金の主旨に合う事業か?」などを見極めます。
2.具体的にやるべきことやリスクを洗い出すため
起業にあたって「何から着手していいかわからない」というケースも多いでしょう。そんな時は事業計画を立てることで、どんな作業が必要か、またどんな手順で進めるべきかが整理できます。
さらに「競合に対抗するにはこの要素が足りない」「用意した資金では賄えない」というように、事業の問題点やリスクの洗い出しにもつながります。
3.事業計画を可視化して関係者で共有するため
起業するとなると、取引先などのステークホルダーに向けて「どんな事業で起業するか」「将来どんなビジョンで起業するか」などの説明を行う必要があります。こうした場合にしっかりした事業計画を提示できれば、周囲の理解と協力を得られやすくなります。スムーズな起業を実現するには、事業計画は欠かせないのです。
4.資金額や期間を検討して事業の実現性を高めるため
熱意があっても、無理な資金計画やスケジュールで起業すれば、当然ながら失敗するリスクは高まります。事業計画は数年後の事業を予測しながら立てていきますので、将来を見据えた無理のない資金や期間を考える機会にもなります。
基本的な事業計画の内容
「事業計画には何を載せればいい?」と疑問に思う方も多いかもしれません。まずは基本的な事業計画の内容を把握しておきましょう。事業によって必要な内容は変わりますが、ここでは一般的な事業計画に求められる6項目に絞って紹介します。
1.事業目的やビジョンを決める
どんな目的で起業しようと思ったのか、将来どんな目標を持っているのかをまとめます。目的やビジョンは、事業計画の根幹となる部分です。目的やビジョンを明確にすることで、周囲の理解が得やすくなるとともに、具体的な行動計画に落とし込みやすくなります。
2.収益を得るビジネスモデル(仕入れ先・販売先)を整理する
どんな手法で収益を上げるかという事業の全体像をまとめます。全体を把握するためには「顧客は誰か」「どんな商品・サービスを提供するか」「提供するために、どんな設備や人材を使うか」といった要素を整理しておく必要があります。
3.内部・外部の現状を把握する
どんな方向で事業を進めればいいかを知るには、現在置かれている状況の把握も欠かせません。内部とは自社のことで、自社の強みや弱みを分析しておきましょう。一方、外部とは市場(顧客)や競合他社のことで、市場調査や競合分析が必要です。こうして内部・外部を分析して状況を把握することで、事業の方向性が定まります。
4.販売戦略を立てる
顧客ターゲットをどこに定め、どんな手法でプロモーションをするかというのが販売戦略です。事業の成長性に大きく関わるので、事業計画を立てる時点で販売戦略も考えておく必要があります。内部・外部の現状分析した結果をもとに、販売戦略をまとめていきましょう。
5.売上計画を立てる
事業が数年でどのくらい売上を伸ばし、収益を伸ばせるかは事業計画にとって非常に重要です。そこで「いつまでにどのくらい売上を上げるか」という売上計画を立てます。
ただし起業前や起業直後の場合は、まだ実績がありません。そのため、売上額を想定しづらいという課題があります。まずは仮の数字で構いませんのでシミュレーションを行い、その上で、他社の事例などを参考にしながら売上計画の精度を高めていきましょう。
6.資金計画を立てる
資金が枯渇してしまえば、事業の継続は難しくなってしまいます。つまり事業を継続させるには、資金計画も必要な要素となってきます。
起業時に用意する資金だけではなく、事業をスタートした後にかかる運転資金もシミュレーションしておきましょう。綿密な資金計画を立てておくことで、より事業の実現性・継続性を高めることができます。
事業計画を立てるときの6つのポイント
実際に事業計画を立てる際には、いくつかのポイントがあります。こちらでは、最も注意すべき6つのポイントについて解説していきます。
1.まずは情報収集から始める
情報が乏しいまま事業計画を立ててしまうと、どうしても精度は低くなってしまいます。いきなり計画を立てるのではなく、関連しそうな情報集めから始めましょう。
また類似ビジネスの事業計画をチェックしたり、市場や顧客に関わる情報をチェックしたりすることで、自分の事業イメージがより具体的になっていきます。
2.分かりやすさを心がける
事業計画は基本的に外部の方に見せるもののため、読み手他の人に伝わりやすいよう「分かりやすさ」が求められます。分かりづらい事業計画では、融資や助成金を受けられない可能性がも出てきます。
事業計画を分かりやすくするには、まず図や表をできる限り使って、視覚的な説明を心掛けたいところです。また、売上計画や資金計画などを分かりやすくするには、できるだけ数字を盛り込むことも重要です。
起業時は仮の数字を載せることになりますが、ここで重要なのが根拠を示すこと。どんな計算で仮の数字を設定したかという根拠を載せることが、説得力があり、分かりやすい事業計画につながります。
そして、またリスクや課題に対する解決策を具体的に書くなど、曖昧な説明ではなく、できるだけ具体的に書くことも意識しましょう。
3.第三者に事業計画をチェックしてもらい改善する
特に融資や助成金を受けるには、しっかりと細部まで作り込んだ事業計画が必要となります。とはいえ、どこまで作り込めばいいかわからないという悩みもあります。こんな時は、第三者にチェックしてもらうことがポイントです。第三者の方に見てもらうことで、足りない要素や伝わりづらい部分が明確になり、作り込むレベルがわかりやすくなります。
4.既存のフォーマットやフレームワークを活用する
ゼロから事業計画を作るとなると、相当な時間を要してしまいます。こうした場合に使いたいのが、既存フォーマットです。金融機関などさまざまな団体が、事業計画のフォーマットを提供しています。創業手帳でも会員登録をした方が無料で使える事業計画のフォーマットを用意しています。こうした既存のフォーマットを利用すれば、効率よく事業計画を立てることができます。
また、事業計画を立てる際に役立つフレームワークも多くあります。フレームワークとは「枠組み」という意味ですが、ビジネスにおいてはアイデアや戦略を練るときにどんな企業でも使える思考法をフレームワークと呼びます。
例えば事業計画のフレームワークで代表的なものといえば、内部・外部環境分析に使える「SWOT分析」。これは内部・外部それぞれに「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」という4つの要素で考えるフレームワークです。
すでに多くの起業家が利用したフォーマットやフレームワークを活用できれば、初めての方でも事業計画を立てやすくなります。
5.起業家向けセミナーや相談会で事業計画の立て方を学ぶ
事業計画で売上や資金の計画を立てる場合、会計関連の知識も必要になってきます。会計知識がない、数字が苦手、という方は、専門家によるセミナーや相談会に参加してみるのがおすすめです。
自治体や民間企業では、起業家向けに事業計画の立て方に関するセミナーや相談会を実施しています。専門家から事業計画の立て方を学ぶことができますし、独自のフォーマットやフレームワークを教えてくれるケースもあります。さらに分からない点をその場で質問できる点もメリットでしょう。
6.事業計画は「実現・達成できるか」が重要
事業計画がどんなに優れていても、実現できなければ意味がありません。融資や助成金を受けるときも「本当にこの目標をこの期間で達成できるのか?」という事業計画の実現性は厳しくチェックされます。
ただ起業前や起業直後はやりたいことありきのため、どうしても目標を高く設定してしまいがちです。できるだけ多くの人にヒアリングをして「本当に目標を達成できそうか?」「他に課題になりそうなことはないか?」といった点を踏まえ、事業計画を立てるよう注意しましょう。
まとめ
起業において、必須とも言える事業計画。融資や助成金を受けるときだけではなく、ステークホルダーに理解を得る際や、事業の実現性・具体性を高めるためにも事業計画は欠かせません。できるだけ時間をかけて、しっかりとした事業計画を立てていきましょう。
精度の高い事業計画が、起業の成功につながります。
とはいえ、起業前や起業直後の方にとって、事業計画を立てるのはハードルが高いのも事実です。実際のところ「事業計画を立てる時間が取れない」「自分なりにまとめたものの、分かりやすい事業計画にならない」と挫折してしまう方も多いようです。
こうした場合には一人で悩まず、自治体や民間企業など、周囲の専門家をうまく活用しながら事業計画を立てていくことが大切です。
(編集:創業手帳編集部)
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